2016年10月13日

「不良少年とキリスト」のススメ

純文学作品と聞いて、「とっつきにくいなぁ」と思う人はなかなか多いのではないだろうか。

けれども、現在、純文学と呼ばれている作品の作者には、思わぬ面白い言い回しや表現、また作家たちの興味深い人間関係を書いている人もいるものだ。
そこでぜひ紹介したいのが、坂口安吾の「不良少年とキリスト」だ。

なんの話だ?と思わせるような冒頭

冒頭しばらくは、坂口安吾の歯痛の話から始まる。歯痛に苦しんでいる間の八つ当たりとも言えない乾燥、そして歯痛が治ってからの奥さんとのやり取りや奥さんへの感想がなかなか面白い。
当時の医学の水準というものももちろん関係しているのだろうが、歯医者へ行ったのにどうしようもない痛さをそのままにされてしまった怒り混じりの悲しさを切々と、罵声混じりに訴える様子はなかなか面白い。
私も、虫歯ではないが歯痛を起こした時を思い出して思わず安吾に同情をしてしまった。

太宰治について

そうやって坂口家の団らんを楽しんで後に、壇一雄(太宰治とも交友のある作家)が現れたところから、太宰治の死へと触れる事になる。

太宰治の葬式や、それまでの自殺未遂についてももちろん触れられているのだが、見方によってはさんざんこき下ろされているように見える。しかし、ここまで書く事ができるのは、太宰治と交流があり、坂口安吾本人も憎からず思っていたからなのではないかと感じる。
それは、冒頭で太宰治の作品をあらかた読み返してしまったと言っていることからも、知る事ができる。

坂口安吾の太宰治への評価

その後も、坂口安吾は太宰治を「コメジアンなりきることが、できなかった」と言い、「死に近き頃の作品」についてはフツカヨイ的なものが多いと散々な様子で語っている。

太宰治といえば、小学校の頃から国語の教科書に載るほどの作家で、『走れメロス』は誰もが一度は読んだことがあるだろうし、その他の作品も読んだことはなくても知っているという人は多いだろう。
現代から見ると、とても有名で凄い作家、という印象が強い太宰治を、ここまで言い切る事ができてしまう坂口安吾という人物は、純文学を苦手としている人たちにこそ、とても驚きが大きいのではないかと思う。

その他の交友関係

「不良少年とキリスト」には、他にも安吾の作家仲間や同時代の作家の名前がたくさん出てくる。その書き方から、本の折り返しにある安吾の顔がどういう表情でその人を評価しているのかというのが容易に想像できてとても面白い。

ここまで直接的に、批判をするという事は現代ではなかなかないように思われるだけに、余計にそれが面白いし愉快だ。また、批判ではあるのだろうが、ひたすら憎悪をぶつけている様子ではないところに、安吾のその人に対しての評価が見えるようだ。

苦手な人にこそオススメ!

純文学が苦手な人にこそ、「不良少年とキリスト」はオススメしたい。
言い回しや表現の仕方は堅苦しい言い回しが苦手な人でも、坂口安吾の言い回しや表現はどこか親近感が沸くだろう。
それと同時に、太宰治の死へ対する坂口安吾のやりきれなさや残念さから感じ取る事の出来る、2人の関係も味わってほしい。

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