今だからこそ日本のリスナーに聴いて欲しいプリンスの曲
アメリカの伝説のアーティストであるプリンスの死から半年が経過しました。
日本ではそれほど馴染みがなかったせいか、あまり大きな騒ぎになりませんでしたが、ミネソタ州では6月7日を「プリンスデー」とするなど、大変なビッグニュースになりました。
日本のリスナーの方にも記憶から忘れないうちに、ぜひ聞いて欲しいプリンスの曲を紹介しています。
2016年4月21日、有名アーティストであるプリンスが亡くなりました。
まだ57歳ということで、これからの活躍も期待されている中での死。
私自身プリンスの楽曲の素晴らしさを大いに楽しんできただけに、しばらくは心が沈んでしまっていたのが正直なところです。
ただ、僕自身はともかくとしても実際の所海外での名声と比べて、日本での人気はイマイチというのが実感としてありますね。多くが本人の死をきっかけに再評価されるというのが、日本で洋楽アーティストの売れ筋パターンであると思うんですが。
プリンスに関してはかつて大ファンであった自分のような人の興味を掘り起こすことはあっても、新たなリスナーをつかむには至らなかった気もします。海外では結構なアクションがあったようですが。
その理由は全盛期の頃のセクシャリティを過剰に強調した楽曲の歌詞や、パフォーマンスが当時の日本のリスナーには、あまり受けが良くなかったというのはあるかもしれないですね。
クイーンやマイケル・ジャクソンのときや、プリンスの少し前になくなったデビッド・ボウイとは大きな違いだった気がします。
実際の所、身の回りの当時を知る女性は、プリンスという名前を聞いただけで拒否反応を示す人は少なくありません。洋楽好きを自認するタイプの方でもそうだったりしますからね
ただ、プリンスの楽曲群は膨大であり多種多様。
その中には言い方は微妙ですが、「普通に聴ける」「普通に良い曲」「おおむね健全」というのも多数あります。
今回はそういったプリンスの良質なポップスをピックアップしてみました。
デビュー初期
初期から上半身ハダカでジャケットに写ったり、全裸で馬にまたがったり、パンツ一丁でジャケに登場したりと、そのようなことばかりしているプリンスではあるのですが
初期の曲調は今聞くと結構普通に楽しめる良質なポップスも多いんですね。
デビューが70年代後半ですから、まだディスコの影響が大きかった時代だというのも理由としてあるかもしれません。
プリンスの作品として二枚目に発売されたアルバムに収録されている、岡村靖幸の「だいすき」のネタ元でもある「I Wanna Be Your Lover 」などは、かなりポップでキラキラとした曲調です。
歌詞としてもとにかく「恋人になりたい」とグイグイ押しまくる告白ソングです。
若干きわどい描写もないではないですが、ある意味まっすぐなプリンスの純粋さが、よく現れている曲といえるでしょう
この後、プリンスは営業戦略的な意味も含めてセクシャリティを極限まで押し出すようになります。
おぼっちゃまくんに出ていた貧ぼっちゃまのような、後ろ丸出しな服で歌ったりと腰使いが極限までヤバイステージングで、露悪的ともいえるパフォーマンスは物議を醸しました
ただ、その戦略が当たったというのは否定できず、アルバムを出すごとにプリンスは売上を増し、カリスマミュージシャンとしての存在を確かなものにしていきます
そして1984年アルバム「パープル・レイン」が同名のプリンス自身主演の映画とともに大成功。
アルバムとしてもそれまでに出した曲をよりメインストリーム向けにアレンジして提示したものが多く、まさにそれまでの総決算と言える作品になりました。
エロスやロック的な方法論を突き詰めて、ポップフィールドでも頂点をきわめつくしたという思いがあったのか、それ以来プリンスは若干哲学的、宗教的な方向に踏み込んでいったようです。
パープルレインのブレイク後
パープル・レインからほどなくして突如といった感じでリリースされたのが「アナザーワールド イン ア デイ」ですが、それまでのセクシャリティの強い曲とは一線を画した曲も収録され始めました。
印象的なのが「ポップライフ」という曲で、人生のスリルやそれについて楽しむことを書いた作品。
アルバム全体がサイケデリック方面に振れた感じのあるものでしたが、中でもこの曲はプリンス一流の哲学を感じさせるものでした。
題名の通り、ポップの権化のような曲で、パープルレインの後にこの曲を代表するようなアルバムを出したということで、正直売上的にはかなりトーンダウンするという結果になってしまいました。
(当時、本人もインタビューでそのような発言していたようです)
その反面、プリンスのアーティストとしての格上げをしたというのも事実です。
その後「サイン・オブ・ザ・タイムズ」というアルバムでは、それまで一緒に仕事してきたバンド レボリューションと決別し、自分の個人名義作品をリリース。その分、却って多面的な魅力を提供する形となりました。
ポップ系の曲としては歌詞にまったく卑猥な部分のない「スターフィッシュアンドコーヒー」が画期的だったと言えます。
もちろん英語の分かる人にはなんらかの隠喩があるのかもしれませんが、この曲でセサミストリートに出演もしてますので、本当に健全な曲だったのだと思います。
マペットたちと楽しく歌い踊るプリンスの姿は、なかなか新鮮ではありました
続いてのラブセクシーというアルバムでは現在も悪評の的(笑)なのですが、プリンスが全裸でジャケットに登場という暴挙が行われました。
どちらかと言えばそういったエロ方面からは引く様子が見えてはいたのですが…
当時CDを店頭で買うのが非常に恥ずかしい…どころではなく絶対無理という感じで、こっそり知り合いのCD屋に取り置いて貰った記憶があります。
良質ポップ路線としては「I Wish U Heaven」がまさに天国にいるかのような穏やかな癒やしの曲調で、PVでもプリンスとそのパートナーの女性たちが天使をモチーフにしたかのような衣装で登場。
爽やかで清らかですらあります。正直プリンスらしくはないのですが。
そして忘れてはいけない「Positivity」。
タイトルどおりのポジティブな生き方について歌った曲です。
このアルバム「LOVESEXY」はジャケットやタイトルと裏腹に、普通に良いポップスの宝庫なんですが、残念ながらプリンスが何を思ったのか、CDのスキップ機能を使えないような形で製作したため、一部の国のCDを除いては1番最初からまるまる聞かなければならないという。仕様になっています
まあ、アルバムのコンセプト的にそのように聴いてほしかったということなんでしょうが、その結果良曲が埋もれるような結果になったと思ってしまうのは自分だけでしょうか?
バットダンス以降
その後、バットダンスが売れた後はおおむねゆるやかに低迷していったプリンスですが、エホバへの入信もあり、エロモードは封印していく方向となりました。
死去直前はエロ時代の歌は歌詞を替えたり、自分では歌わず客に歌わせたりということなどもあったようです。
前出のバットダンスも、映画の登場人物の台詞などをリミックスしたもので、エロ系とはとても言えない形になっていました
最後のTOP3ヒットと言われる「The Most Beautiful Girl In The World」は完全にエロ封印したポップスで、後に松田聖子もカバーしています。
2006年のフルCG映画「ハッピーフィート」ではペンギン主役の完全にお子様向け映画の主題歌に、「Song of the Heart」という曲を提供しています
このように、結局キャリア38年の内ののおよそ半分で、宗教に生きがいを見出しているのもあり、エロ控えめの活動なんですが、やはり全盛期の印象が強いです。
大評判だったアメリカンボウルハーフタイムショーでは、ギターをプレイする姿が無理やりエロ方面に揶揄されたりもしました。
まあ、歌っていたのが全盛期を象徴する「パープルレイン」でしたし、しょうがない部分もあるのかもしれませんが。
また、楽屋では卑猥な言葉をつかったバックバンドのメンバーに罰金を科したりもしていたようですが…。プライベートでも年齢のこともありますが、激しいと評判だった女性関係も鳴りを潜めていた様子。
これからプリンスのイメージは変わるのか
死去の際のニュースでは、プリンスには膨大な数の未発表曲があり、金庫に保存されていたといいます。
それまでも流出した未発表音源というのは多々あったようですが、明らかに良曲であるのにおそらくは全盛期のセクシャルなイメージで売り出しにそぐわない、若干普通な曲などはお蔵入りにされていたようです
まあ、尽きせぬ才能ゆえに出来た贅沢な行動だったとも言えますが。
未発表音源はプリンスの遺族に委ねられており、どのような形でリリースされるかは彼ら次第である模様。その埋もれた曲の中には、王道とも言える曲があるのではないかと期待が膨らみます
これらの発表がすすむと、現在日本で持たれているプリンスのごく狭いイメージも改善されもっと広く親しまれるようになるのではないか?と期待してやみません