【レビュー】クラッシュ・オブ・クランはなぜ世界中で人気の神ゲーだったのか【ゲーム批評】
今回は、「クラッシュ・オブ・クラン (Clash of Clans)」というゲームについて書いていきたいと思います。「Supercell」が制作・運営し、世界147カ国でナンバー1の人気になった、超人気ストラテジーゲームです。
クラッシュ・オブ・クラン (Clash of Clans)とは?
「クラッシュ・オブ・クラン」、通称「クラクラ」は、2012年の8月にiOS版でAppStoreにリリースされた戦略ゲームです。
自分の村を発展させて防衛設備を固め、軍隊をつくって相手の村を襲撃して資源を奪うという、ある種の野蛮さ・残酷さがむき出しになったようなコンセプトではあります。
しかし、キャラクターがコミカルにデフォルメされているので、血生臭さはありません。
中には、自分のゲーム画面を開いたときに、自分の村がズタボロにされているのが嫌なので、まったり農場ゲームの「ヘイ・デイ」がいい、という人もいるみたいです。(そういう人は素直にヘイ・デイをやるのがいいと思いますw)
私なんかは、自分の村がボロボロにされていたら、「やられたらやり返す 倍返しだ!(はやく半沢直樹シーズン2放送してよ!)」と思っちゃいますね。
クラッシュ・オブ・クランのどこがすごいのか?
私が考える「クラッシュ・オブ・クラン」のすごさは、非同期かつ本格的な対戦を実現したことです。
今でこそ、パソコンで遊べるMMORPGのようなリアルタイムバトルが当たり前のようにスマホでプレイできますが、クラクラが出た当初は、そこまで技術が進んでいませんでした。
怪盗ロワイヤル
もともとのモバイルゲーム・スマホゲームは、「携帯電話」の特性上、ちょっとした空き時間にプレイするもの、というのが主流でした。
だから、かつてのMobageの大ヒット作「怪盗ロワイヤル」のように、相手がログインしていない隙間を狙ってお宝ゲット!というシンプルなものが多かったのです。
パズル&ドラゴンズ
時を経て、ゲームの主戦場がスマートフォンに内蔵するネイティブアプリになり、2012年の2月頃「パズル&ドラゴンズ」という大人気ゲームがリリースされました。
パズドラは、パズルとRPGが噛み合った非常に深いゲーム性のあるタイトルでした。しかし、パズドラはほとんど1人プレイ用のゲームで、「プレイヤー同士が対戦する」という要素はありませんでした。
クラクラのすごさ
クラクラが素晴らしいゲームなのは、パズドラ以上に深いゲーム性を兼ね揃えたゲームでありながら、プレイヤー同士の対戦を可能にしてしまったことです。
どのようにしてそれが可能になったのか?
私は、「アメリカンフットボール」というスポーツに近い発想から来ていると思います。
「アイシールド21」という漫画のおかげで、日本人にもアメフトというスポーツはある程度親しみのあるものになりましたが、アメフトは「攻撃」と「守備」のフェーズがはっきり別れています。メンバーが総入れ替えされて、それぞれが得意な分野に特化できるのです。
「クラッシュ・オブ・クラン」にも「攻撃」と「守備」があります。
- 相手の村を攻め落とすのが「攻撃」
- 自分の村を防衛するのが「守備」
となっています。特筆すべきは、「攻撃」はプレイヤーが操作するけど、「守備」のフェイズではプレイヤーは直接操作せず、準備するだけとなっています。
村の防衛は、プレイヤーが駆り出されるのではなく、防衛施設を設置するだけです。これによって、携帯性と本格プレイの良さが両立する「非同期」バトルが可能になりました。
クラッシュ・オブ・クランの凄さは、施設を「並べて守る」ことと、その「並び」を打ち破るユニットを考えることの面白さにあると、私は考えています。
クラクラは将棋やチェスのようなもの
直接プレイヤー同士が向き合うわけではありませんが、「クラッシュ・オブ・クラン」は「将棋」や「チェス」に近いところがあると思っています。
攻撃用のユニットには、「バーバリアン」「アーチャー」「ジャイアント」「ゴブリン」「ウォールブレイカー」「エアバルーン」「ウィザード」「ヒーラー」「ドラゴン」「P.E.K.K.A」がいて、闇ユニットや「ライトニング」「ヒーリング」などの呪文があり、これらを組み合わせて敵の防衛設備を攻め落とします。
防衛設備には「壁」「大砲」「アーチャータワー」「追撃砲」「対空砲」「ウィザードの塔」「エアスイーパー」「かくしテスラ」「巨大クロスボウ」「インフェルノタワー」「イーグル砲」などがあって、これらをうまく組み合わせて、敵の攻撃を凌ぎきる防御をつくります。
RPGプレイヤーからすると「少ない」と思うかもしれませんが、そんなことを言えば、チェスや将棋の駒だって少ないわけです。
それでも、チェスや将棋は今だにプロの大会すら行われている奥深いゲームです。
それと同じで、クラクラは、キャラは少ないけど、それぞれの動きを組み合わせることで、あまりにも奥深いゲーム性を達成できています。
クラクラはチェスや将棋に近いゲームだったのです。
深まっていくゲーム性
ゲームをやっていく中で、プレイヤーは防衛も攻撃も両方経験することになります。
両方経験するからこそ、「こういう守り方をされると攻めにくいな……」ということがわかり、その守り方を自分の防衛にも取り入れます。
また、自分の村が攻め落とされたとき、相手がどのように攻めてきたのかを、ムービーで見ることができるようになっています。
これを再生して、自分の村の防衛にどのような欠陥があったのかを知ると同時に、相手の攻め方を参考にして、自分の攻撃にも活かすことができます。
この仕組によって、プレイヤーはゲームをやっていくうちにどんどん成長していくし、おそらくゲームを作った側ですら予想できなかった数々の戦略が生み出されていきました。
将棋やチェスと同じように、「定石」が生まれていくのです。
このような革命的な事態が起こったのは、世界中にプレイヤーが多いということもあるでしょう。ただ、プレイヤーが多いのは、そのゲームのコンセプトが非常に面白かったという理由が多いです。
ユニットを出して攻撃する動きが直感的なレベルで面白いのと同時に、ゲームとしてもものすごく奥深いものになっているのです。
まとめ
プレイヤー同士の「非同期性」は、ゲームにおいてはしばしば足枷や妥協として考えれてきました。
現に、「モンスターストライク」以降の最近のゲームはすべて「リアルタイム対戦」をアピールするものが多いです。
しかしクラッシュ・オブ・クランは、足枷であった「非同期性」を、「じっくり戦略を考え、相手のことを想像して準備し、相手の準備を自分の発想によって崩していく」という、奥深いゲーム性に変えてしまったのです。
今においてなお、クラッシュ・オブ・クランの優れたゲームデザインは参考になります。
もちろん、普通にゲームとして遊んでも面白く、レッドオーシャンになったスマホゲーム業界の中でも存在感を失っていません。
色々な意味で、今からでもクラクラを遊んでみることをおすすめします。
おそらく、コンピューターゲームの歴史に刻まれるタイトルの一つになることでしょう。