映画「聲の形」と山田尚子監督
大今良時先生原作の「聲の形」。
第19回手塚治虫文化賞新生賞受賞作を受賞し、2015年版の「このマンガがすごい!」オトコ編でも第1位を獲得した人気の作品です。
完結して尚読み始める人が増えているこの作品が、映画化しました。
単行本にして全7巻の内容を120分強に…?
印象的なストーリーである本作がどのように一本の映画になるのか、原作ファンは期待と不安が入り混じった気持ちで封切を待っていました。
この作品のタイトルがに「声」ではなく「聲」という文字がつかわれていること。
作者が意図するその優しく深い意味を映画で描き出せるのか、注目が集まっていました。
子供だったから?いや、それも自分だ。
小学生時代、いわゆる「ガキ大将」だった主人公のクラスに、聴力を失った少女が転校してくることから話が始まります。はじめこそ皆気遣いを見せていたものの、その不便さに理解が及ばず、いじめの対象になってしまいます。
それでもニコニコと学校にやってくる、会話に混ぜてくれと訴える、「わたしとあなたはともだち」…。その態度を「いい奴ぶってんじゃねーよ」と一蹴した主人公は、補聴器を奪って壊すといういじめ(いたずら?)をはじめます。
それが頻繁になってきたところで、不審に思った少女の母親が学校に相談。
クラスの友人に、そして担任の先生にすらいじめ首謀者としてつるしあげられた主人公は、自らが、いじめの対象となってしまいます。
茫然自失の日々の中、少女は再びの転校により主人公の前から消えます。
以後、少女へのわだかまりを残したまま、主人公は成長します。
届かなかった手、届いた手。
映画でも印象的に描かれていた、主人公と少女の手。
成長し、高校生になったふたりは、手話を通して会話をするようになります。
その部分でも「手」をとても繊細に描いているのですが、この物語で特に印象的なのは、ふたりが接触する「手」です。
主人公と少女が再開して間もなく、落とし物を拾うために少女が川へ飛び込むシーンがあります。
危険を感じて、主人公は少女の手を掴もうとしますが、それは空を切り彼女は川の中へ。
そのあと主人公も川に飛び込み目的のものを見つけますが、空を切った手がとても印象に残ります。
そして物語のクライマックス、少女が再び「飛ぶ」とき、主人公は力いっぱい駆け出し、少女の手を掴みとりました。
少女との再会からの短い期間で、彼の心が強くそしてきっと彼の思う「良い方向」へ向けた瞬間です。
原作ファンも好評価の山田尚子監督
映画「聲の形」は、完結漫画をダイジェストのように追った映画ではなく、本当に映画のために構成した一本のストーリーとしてしっかりと楽しめます。
印象的なシーンは外すことなく抑え、必要なエピソードや時間経過をわずらわしくさせず簡潔に描いています。
初めてこの作品に触れた人には原作のままの感動を届け、原作ファンも好評価を贈る山田尚子監督。
山田尚子監督で映画化してほしい!という漫画が増えそうです。
構成力が素晴らしい監督だからこそ、また完結作品を手掛けてほしいという気持ちがあります。