『先生!』のような先生がいたら…と今でも思います【感想・ネタバレ注意】
河原和音さんの描いた『先生!』をお勧めします。講談社から10年以上前に刊行されたコミックスで、このほど生田斗真さんと広瀬すずさんで映画化されることになりました。
内容は、主人公が通っている高校の先生に恋をして…というよくある設定なのですが、先生に思いが通じるまで、思いが通じてからの葛藤など自分の高校時代と比較して「こんなことあったな」とか、「こんな風だったらよかったな」と色々な思いを抱かせてくれる作品です。
- メディアKindle版
- 作者河原和音
- 出版・メーカー集英社
- 発売日2016-10-28
出会いから思いが通じるまで
主人公・響は友人に頼まれて先生の下駄箱にラブレターを入れるように頼まれますが、間違えて違う先生の下駄箱に入れてしまいます。それが後に響が恋に落ちる伊藤先生です。
後日間違えた手紙は返してもらえたのですが、しっかり中身が添削されていたことや「名前がないから0点」と点数まで付けられているところがまず面白い。
長身でとっつきにくい印象を与える伊藤先生のイメージが少し動いた瞬間です。それから少しずつ伊藤先生を意識するようになり、響は「好きになってもいい?」と宿直で学校に泊まり込んでいる先生に告白をするのでした。
初めは「俺が教師で、お前が生徒だからだ」と響は断られるものの、伊藤先生の方も少しずつ響の存在が大きくなっていった様子。
読み進めていてキュンとしたのは、クラスの生徒に「誰だ?」と昼寝を起こされた時に「島田(響の苗字)!」と言ってしまい、かつそれを響が聞いてしまっていたこと。響は決して目立つような生徒ではないけれど、一生懸命なところが少しずつ伊藤先生の印象に残っていったんだな、と思うとなんとも甘酸っぱい気持ちになります。そして、次のテストで高得点を取る、という約束で響と伊藤先生は手を繋ぐのです。
響の思いが伊藤先生に伝わるのは学校祭の日です。途中、伊藤先生のクラスの女子に「本気で伊藤先生のことを好きな子もいるから、他のクラスの子がウロウロするのはやめてほしい」と言われたり、「俺なんかやめておけ」と伊藤先生に言われたりすることで先生に恋をすることは無駄なことなんじゃないか、と悩んだりもします。
仮装の衣装を見せたいのに伊藤先生の姿がない、学校中を探しまわって先生がいたのは屋上。お互いを「変な格好…」と言いつつもいい雰囲気の2人。ウェディングドレスの仮装をしていた響は、「この先もずっと伊藤先生のことが好きです」と言い、「なーんてね!」と言おうとしたところで伊藤先生からキスをされます。
響は混乱し、どうしたらいいのかわからなくなってしまいますが、最後には「ちゃんと好きだから」と伊藤先生も響に心が動いたことを響に告白するのでした。
思いが届いてからたくさんのライバル出現
当然のことながら、伊藤先生と付き合っていることは公にはできない。そんな中、美術の中島先生も伊藤先生のことが好きらしい、教育実習生として現れた伊藤先生の元カノ、先生のことを好きになったという後輩など、響の周りには常に不安の種が撒かれることになり、その度に悩み苦しみ、自分から伊藤先生の手を離そうとしたこともありました。
後に美術の中島先生は響にアドバイスをくれる立場になるのですが、物語の後半には響のことを気にかける同級生の存在に伊藤先生が響から距離を置く、ということもありました。そんな2人を支える親友の千草(ちいちゃん)や浩介、千草の彼となる渚の助けがあり、響も伊藤先生もやはりお互いの存在が一番大事だということに気がつき、晴れて卒業の日を迎えることとなるのです。
響と伊藤先生を支える他の登場人物の話もしっかり描かれていて、それぞれの人物に感情移入することができます。
特にいいのが、伊藤先生が中学生だった頃のエピソードです。ぶっきらぼうだけど生徒には真摯に向き合ってくれる伊藤先生はどんな学生時代を経て誕生したのか。こんな先生がいたらよかったのにな、と思う先生です。
最後に
20巻を超える大作がどのように映画化されるのか楽しみ半分、不安半分ですが、伊藤先生が本を飛び越えて実写でどのように動き出すのか、映画には注目したいところです。