「あひるの空」について語りたい、そして伝えたい
「あひるの空」は現在も週刊マガジンにて連載されているバスケットを題材にした少年漫画です。高校生にして伸長が150㎝に届いていない、とてもバスケット向きではない体でも母から教わった3Pシュートを武器に個性豊かなチームメイトと共にインターハイを目指すといった漫画の世界では良く見られる設定(非現実的な)の漫画です。私も最初はバスケが好きなのでなんとなく読み始めました。
あれから10年以上経ちます。いいおじさんになった今でも新刊を楽しみにしています。おじさんになった今の方がよりハマっているかもしれません。その魅力を語りたいと思います。
リアルではない主人公で書かれるリアルな世界
まず何と言っても主人公の設定、そしてチームメイトが全くリアルではない。
伸長150㎝の主人公の友達は身長190㎝以上、シュートが全く入らない、ジャンプだけが取り柄のキャプテン、刺青が入っている超高校級のフォワード、アフロで190㎝でカールが大好きなポイントガード等全くリアルではないこの登場人物達ですが、内容はすごくリアルなんです。
まず漫画がスタートして公式戦で主人公チームが勝つまで20巻近くあります。それまで試合があると必ず負けます。漫画の流れ的にここは勝ちだろうと思う試合でも容赦なく負けます。
理由は「どんなに努力しても届かないものがある。」
作中でも監督の先生が「努力して上がるのは学力だけ、どんなに努力しても届かないモノがある、でもそれは、それがリアルな社会でしょう?」と力説する場面があります。
全くもってその通りではないでしょうか?現実的な社会で生きていく葛藤や心情をバスケットを通して、主人公を取り巻く人物達で描いているのが「あひるの空」という漫画です。
あひるの空の名言を語りたい
主人公のチームとの練習試合をすることになった相手校の話です。
その高校はどこにでもある高校で、先輩にしいたげられた後輩がまたその後輩をいびる、ダラダラとした練習、そこに現れた新しい監督。監督の練習内容は非常につらく反発する部員の中に一人その練習を受け入れる生徒がいます。
彼の心情を描く描写のセリフ「この足は誰の足だ?自分の足だろう?走らされるな!」そして監督が生徒達に一言、「世の中にやらされているなんて事は無い、やると決めた、それは自分に責を課すという事、他人のせいにするな!」これって今の若い子たち全員に言えるのではないかなと思いました。もちろん自分にもです。
何かあれば自分には非が無い、誰かのせい、誰かがやってくれる。そいう考えをこの回を読んで一蹴されました。
もちろん全てがそうとは言えませんがこの言葉ってものすごい現実社会に当てはまると思います。こんな名言が何カ所も「あひるの空」にはちりばめられています。
ギャグ要素も語りたい
作者の方は多分そんなに年齢が離れていないからだと思いますが、作中のあちらこちらに昔ハマったゲームやお笑いのオマージュ、昔流行った音楽の歌詞等が盛り込まれています。細かく読めば読むほど見えてくるのです。これも一つの魅力です。
最後に語りたい
良く友人達に聞かれます。「スラムダンク」とどっちが面白いの?
私はいつも同じ答えを伝えます。
純粋なバスケット漫画を読みたいなら「スラムダンク」、リアルなバスケット漫画を読みたいなら「あひるの空」。どちらもバスケットを題材にしていている漫画ではありますが視点が全く違うのです。
スラムダンクももちろん大好きです。しかし大人になり、社会生活をおくる様になった今、間違いなく心震えるのはあひるの空です。学生時代を思い出す場面、笑える場面、考えさせられる場面、いろんな要素を含んだ傑作だと私は思います。
ぜひ一度、お時間あるときに読んでみてください。