バレエを踊るすべての人に読んでほしい「舞姫 テレプシコーラ」
山岸京子が描くクラシックバレエの心髄。本作は1部全10巻、2部全5巻の全15巻が発売されています。
2007年には手塚治虫文化省マンガ大賞を受賞し、知名度を広げました。
できるお姉ちゃんと甘い妹
本作の主人公は篠原六花ちゃんという女の子。六花ちゃんには1つ年上のお姉ちゃん千花ちゃんがいますが、千花ちゃんは容姿端麗、文武両道。バレエの実力はトップクラスです。負けず嫌いな千花ちゃんの影でのうのうとバレエをやる六花ちゃんは学力もそこそこ、バレエの実力も千花ちゃんの影にかすんでしまいます。
クラシックバレエを知り尽くす
山岸先生のバレエの知識には本当に驚きます。
どのように身体を使えば柔軟性が身につくのか、踊りの中でどうすればキレイに見えるのか、ストーリーの中で事細かに描いてくださるので、バレエを習っている人が読んで、実践してみようと思える作品になっています。
その他にも有名なバレリーナの歴史を簡単に紹介してくれたりするので、とても勉強になりました。
「シルヴィ・ギエム」がロレックスの広告に載ったこと、バレエ界の根本を変えたことを知ったのは本作を読んでからです。おかげでギエムの虜になり、引退公演を見に行き感動しました。
本作の中で描かれる現実問題
バレエ界期待の星千花ちゃんは15歳という若さでこの世を去ります。
とある公演で大きなケガを負ってしまった千花ちゃんは、大好きなバレエが踊れないことにとても苦しみます。詳細は描かれていませんが、医療ミスで完治しないケガ。まわりがどんどん上達していく中でレッスンも受けられない苦悩……。
そしてとても現実的問題だと思ったのが「いじめ」です。
同じ学校に通う生徒から物理的・肉体的にいじめをうけていた千花ちゃんはまわりから「強さ」を強いられ誰にも相談することができませんでした。
逃げ道をつくろうとしてもまわりに塞がれてしまう千花ちゃんは、とうとう自殺という選択肢を選んでしまうのです。
まさかの展開に本作を読みながらボロボロと泣いてしまいました。
そこからの六花ちゃんの成長
姉を失った六花ちゃんはそこからどんどん変わっていきます。
まわりのサポートもあり、姉の分までバレエを踊りたいと今まで以上にレッスンに力をいれ、本作2部1巻ではとうとう「ローザンヌ国際コンクール」に出場します。
何度もくじけそうになりますが、姉の存在だけを支えに立ち直っていきます。
初巻から見ている読者は六花ちゃんの成長に涙したのではないでしょうか。
想像力
六花ちゃんはとても想像力が豊かです。
村娘のヴァリエーションの衣装を都会的にして町娘にしても素敵だと言って衣装のデザインを作ったり、振り付けなども自分で作れるほどのイメージ力を持っています。
本作を読んでとても勉強になったのが、振り付けにはセリフがあるということです。
舞台を演じる際バレリーナとしてのスキルはもちろん大切ですが、同等に必要となってくるのが、演技力です。
練習ばかり積み重ねてしまうバレエダンサーは演技の練習をおろそかにしてしまい、舞台に観客を引き込むと言う事を忘れがちです。
千花ちゃんも例外ではありませんでした。実力があっても演技力が不足し、舞台監督に「何かがたりない」と言われてしまいます。
そんな千花ちゃんのために六花ちゃんは振り付けにセリフをつけて練習に付き合ってあげるのですが、この発想は素晴らしいと思いました。
本作を通しての感想
山岸先生の本作を読み、実践してみたことがいくつもあります。
股関節が固くアンデオールができないから小指を意識して開いてみよう。
ルルベでキープするときは身体の軸に通る一本の糸をイメージしてみよう。
それから、過緊張のほぐしかた、緊張で眠れないときの対処法など。
一番やりやすくなったのはやはり踊りにセリフをつけることでした。
実践してみたことにより、苦手だったマイムに自信がつき、今まで以上に舞台を楽しむことができるようになりました。
山岸先生の「テレプシコーラ」はバレエを踊るすべての人に読んでほしい、わかりやすくためになるバレエの教本です。
私はこの作品を強くおススメいたします。