漫画「もやしもん」の魅力を語る

作者のキャラクターへのこだわり

この作品には意外な事に魅力的な女性キャラクターがたくさん登場します。彼女達は個性的でありとてもファッショナブルなのです。

ショートパンツ系、ミリタリー系ゴスロリ系、女王様系などファッショナブルでありながらとても個性的な服装なのです。ここに作者の配慮とこだわりがあります。女性服には必ず流行があり、それを漫画に反映してしまうと非常に緩やかに流れるこの漫画の時系列に合わなくなってしまいます。その為、殆ど流行を問わない服装を彼女らは身につけているのです。
また、きれいな女性キャラクターをと作者は考えている為ほどほどのルックスの男性キャラクターに比べ女性キャラクターが軒並み美しいというのがこの漫画の特徴です。

菌やウイルスのキャラクターも

この漫画には多くの菌やウイルスなどのキャラクターが登場します。この漫画を読んだ事がない人もこれらのキャラクターを見たことがある方は多いでしょう。ここにも作者のこだわりを見る事ができ、この漫画が読者に教養を身につけさせる一端を担っています。

実はこれらキャラクターは実際に作者が顕微鏡で見たものをデフォルメしてできたものです。その為大変愛らしいビジュアルでありながら非常に個性的で為になる情報を提供してくれるのです。この漫画を読むと菌の事をさらに知りたくなり、読者の知識を増やすきっかけを提供しています。

ストーリーへのこだわり

この漫画は驚くほどお酒のエピソードが出て来ます。正直なところお酒の話とそれから少し派生した話題で出来ている漫画と言っても良いかも知れません。それほどお酒ばかり出て来るのです。
しかしながら、このお酒のエピソードの緻密さこそがこの漫画の素晴らしいところなのです。この素晴らしいエピソードは作者が実際に取材に言って得た情報を基づいて出来ているのです。その為読者が得られる情報が多く、読者の知的好奇心を刺激します。

さらに知りたくなり、実際にお酒を飲んでみたい、体験したいと読者に思わせるのです。作者の訪れた場所は国内だけで無くフランスやチェコスロバキアという遠いところにも及びます。
そこで作者が肌で感じたその地の文化や時代背景まで書かれており、学ぶことばかりの漫画です。他国の文化を知ることはニュースを広く深い視点で見る事ができるようになり、世界情勢を知ることにつながります。

知識も得られる

この漫画の素晴らしいところはお酒をカルチャー的視点だけで無くサイエンス的視点で分析して読者に知識をもたらすことだと思います。
この漫画は高校生やひいては大学生レベルの知識を広くかつ恐ろしいほどわかりやすく噛み砕いて読者に提供するのです。文系の人であろうが読み始めた時…当時中学生だった私にも理解できるほどでしたから。難しい話を分かりやすく噛み砕いて説明する事は大変な事です。相当な知識と話術が無ければ不可能な事ですから。それを作者は何事も無かったかのようにさらっとこなしてしまいます。

挙句、可愛らしい菌達のキャラクターに解説させて読者の興味を引くのですから素晴らしい以外の言葉など出て来ません。私の通う大学の植物微生物学の権威ですらこの漫画を大絶賛して地元の高校の図書館に広めているほどです。
そして高校生達に生物学の知識を高めようと日々奔走しています。これほどまでに大学教授すらも惹き付ける魅力は豊富な知識を抵抗無く誰でも得られるように作られた漫画であるが故でしょう。