2016年11月09日

新生K-1とは一体どんな格闘技なのか?これまでのK-1との違いを徹底解説

かつてお茶の間を賑わせたK-1は人知れず消滅し、いつしかテレビで格闘技が放映されることはなくなりました。
そして2014年に新しい運営企業のもと、K-1は生まれ変わり、「新生K-1」として若者を中心に人気を拡大しています。

新生K-1とは

「新生K-1」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
K-1なら知っているけど、新生K-1は聞いたことが無いという人が多いかと思います。

世間を騒がせたK-1はあっという間に人々の関心から消え去り、新しいK-1が生まれたことはまだまだ認知されていません。
この記事で新生K-1を知った人は、そもそもK-1はK-1であって、どうして「新生」なんて言葉がつくのかが分からないかもしれません。

それを説明するために、まずはK-1というブランドについて説明していきたいと思います。

K-1について

K-1といえば世界最強の立ち技格闘技を謳った、ド派手な格闘技イベントとして注目を集めました。
ピーター・アーツやジェロム・レ・バンナといった100キロを超える大男たちが、ビックリするようなKOを量産したことで、テレビ中継されるたびに20%近い高視聴率を記録していたほどです。

そんなK-1についてあまり知られていないのは、実は「K-1」はそれ自体はブランドであって、皆さんが知っているようなイベントそのものではないのです。

これはどういうことかというと、実際にイベントを行っている会社はK-1というブランドの商標を借りて大会を開催していて、人々に馴染みがあるのはむしろイベントの方だということです。

興行会社はこれまで2度入れ替わっており、当初は「ケイ・ワン」、次に「FEG」、現在は「K-1実行委員会」がイベントを行っています。
旧K-1にあたる体制は最初の2つまでで、新生K-1とは「K-1実行委員会が行うK-1」ということになりますが、イベントの実態はK-1というブランドではなく、運営会社によって左右されるというのがポイントです。

旧K-1はド迫力のヘビー級と、選手層が厚いミドル級の2つの階級で世界最強を決めるトーナメントを毎年開催するというコンセプトで人気を博しました。(最終的にライト級も新設されましたが、世界大会は行われませんでした)

特に8人の選手が1日で3試合を行うワンデートーナメントは、有力選手といえどもダメージを負って満足に戦えなくなったり、無名の選手が一夜にして成り上がったりと様々なドラマを生み、東京ドームを満員御礼にするほどの盛況でした。

しかしそんなK-1もいつしか飽きられ、テレビの視聴率も低下すると経営難に陥り、その後は転がり落ちるように運営会社が破産して旧K-1は終わりを迎えました。

新生K-1の誕生

その後、2014年にK-1実行委員会が発足され、商標を持つ香港の企業から、日本地域の独占ライセンスを取得して、K-1を日本向けに展開されることになりました。
運営会社はKrushというキックボクシング団体を行っているグッドルーザーという会社です。

新生K-1は旧K-1のように大規模なイベントをドカンと行うのではなく、4000人規模の会場で、日本の軽量級選手を中心にスポットライトを当てて、地道にファンを増やしていくという方針を取っています。

特徴的なのはアマチュアの育成に力を入れており、全国で高校生・大学生向けのアマチュアK-1大会を開催し、全国大会の決勝をプロの興行の中に混ぜて行っています。

また旧K-1は主に2つの階級だけで行っていたのに対して、新生K-1は2.5kgごとというボクシングに近い階級分けを行っており、わかりやすさよりも、K-1という競技を草の根で発展させていこうというコンセプトになっています。

ですから新生K-1は世間的にはまだ知られていないのですが、それでも着実に人気を得ているというのが現状になります。

軽量級のスター選手がズラリ

旧K-1はヘビー級からスタートして後にミドル級(70kg)、最後にはライト級(63kg)が行われてきましたが、これは軽い階級の方が日本人選手の数や質が高く、世界で戦えるということが背景としてあります。

K-1 MAXというミドル級の大会では、魔娑斗らがかろうじて世界レベルで戦えていましたが、それでも日本人にとっては重い階級で、今現在この階級で世界と戦える選手はK-1の中では残念ながら一人もいないのが現状です。
そんな事情もあって新生K-1ではより軽量の選手たちにスポットライトが当てられています。

新生K-1の中で最も熱い階級となっていたのは55kgと65kgです。

55kgは新生K-1の中でも最も軽い階級で、欧米系の選手は体格的にほとんど存在しないので、日本人選手が上位を占めている階級です。
現在では二人とも階級を上げてしまいましたが、K-1の新カリスマこと武尊と、目にも留まらぬスピードが武器の大雅は55kgを大いに盛り上げてくれました。

一方で世界の強豪選手を含めた競争が最も激しいのが65kgで、現世界王者はムエタイ王者のゲーオ・ウィラサクレックです。この階級は日本人、外国人含めて打倒ゲーオがテーマとなっており、直近のトーナメントでは準優勝したのはイリアス・ブライドというモロッコの選手です。
もちろん日本人選手も上位に肉薄しており、日本代表を決める日本トーナメントの段階から実力伯仲の名勝負が行われています。

外国人スターが不足との声も

ただし旧K-1ではアーネスト・ホーストやピーター・アーツといった外国人のスター選手が次々と誕生していたのに対して、新生K-1では外国人スター選手がいないのではないかという指摘もあります。

旧K-1では世界トーナメントに日本人選手が一人も出場しないということもあったのに対して、新生K-1では半数以上が日本人選手で、ベスト4以上が全て日本人になったこともあります。

これには事情があり、先程も書いたように新生K-1は日本地域でのライセンスであるため、グローバルな団体ではなく、日本国内のドメスティックな団体である事があげられます。
旧K-1は世界で140カ国以上で放映されており、特に韓国では日本と同様にブームになっていたのと比べるとスケールが小さい感は否めません。

またかつてのように地上並みのテレビ局がついているわけでもなく、AbemaTVというネット中継とYouTubeによる動画投稿が主たるメディアとなっており、興行の規模も4000人前後とスケールはさほど大きくありません。

ですから強豪外国人選手を積極的に呼べるほどの資金力がないと言われており、どうしても日本人選手にフォーカスをあてなければならないのではないかと思われます。

これまで参戦した外国人選手の中で最も世界的に評価されている、マラット・グレゴリアンは圧倒的な強さで70kgの世界王者になりましたが、その後は一度もK-1に出場しておらず、ファイトマネーの折り合いがつかないからだと言われています。

一応65kg世界王者のゲーオ・ウィラサクレックは唯一人気のある外国人選手ですが、ゲーオに続くような選手が出てきていないのが現状です。

おすすめ選手紹介

それでは新生K-1に関する紹介が一通り終わったところで、注目選手をピックアップして紹介していきたいと思います。

武尊

新生K-1のカリスマ的存在で、実力・人気ともに他の選手より頭一つ抜きん出ている印象があります。
実績としてはK-1 55kg、57.5kgで世界王者になっており、二階級制覇はK-1では史上初です。

特徴としては軽量級とは思えないほどのKO率を誇る攻撃力で、強豪外国人と真っ向から打ち合い、その全てで打ち勝っています。パンチの威力が最も強烈ですが、キックや膝も強烈でオールラウンドに戦える選手でもあります。

アドレナリンを全開にして戦う選手で、打ち合いになると笑みがこぼれてしまうほど試合が好きと公言しています。
激戦を制した後にコーナーポストに登ってからのバック宙は名勝負の証です。

卜部功也

「アンタッチャブル」の異名を持つ60kgの選手です。
サウスポースタイルから独特なリズムから繰り出す攻撃と、巧みなディフェンス技術で相手に何もさせずに勝ってしまうこともしばしばあります。

一度は60kgの日本トーナメントで新鋭である大雅に敗れていますが、その後見違えるような強さで大雅にリベンジし、二度目となる世界トーナメント優勝を果たしています。

経験豊富な26才で完成された選手ですが、ここのところまた一段とレベルアップしており、一体どこまで強くなるのか底知れないものがあります。

HIROYA

かつて旧K-1で「魔娑斗が認めた天才少年」としてジュニア世代の旗頭として台頭してきた選手です。
K-1甲子園という18歳以下の大会はHIROYAのために作られたと言っても過言ではありません。

K-1甲子園の第二回大会で優勝するなど、同年代ではトップレベルの一角を担っていましたが、その後伸び悩み、卜部功也や野杁正明といったK-1甲子園で戦った選手とは大きく離されてしまいます。

魔娑斗の後継者として「反逆のプリンス」というニックネームを授かったものの、新生K-1でも思うように勝てず、下から突き上げてきた木村ミノルにも1RでKOされたときには引退する事も考えたそうです。

しかし、そこから大晦日のRIZINでは総合格闘家の西浦ウィッキー聡生をKOしてから復活の狼煙をあげます。65kgの日本トーナメントではかつて敗れた寺崎直樹を完全KOし、準決勝では格上の野杁正明をあと一歩のところまで追いつめるなど、確実に一皮むけたことを証明しました。

新生K-1の選手の中では最も知名度がありながら、長らく伸び悩んでいましたが、ここにきてピークに達しつつあるので注目すべき選手です。

ゲーオ・ウィラサクレック

日本人にスポットライトが当てられている新生K-1において唯一の外国人スター選手です。
ムエタイをベースにしており、世界王者にも輝いている本格派でもあります。

ムエタイ選手は蹴り技が強い半面、ボクシングを苦手としていることもありますが、ゲーオはムエタイ仕込みの左ミドルはもちろんのこと、左右のパンチも強烈で、木村ミノルや久保優太といった日本人トップ選手を一撃で葬ってきました。

この階級において絶対王者として君臨しており、何人もが打倒ゲーオを目指して対戦にこぎつけましたが、ほとんど苦戦させられることなく、その全てを圧倒してきました。

K-1に対する愛着も強く持っているようで、頻繁に試合に出場しています。
世界レベルの試合を見たいのならゲーオに注目して下さい!

YouTubeチャンネルもチェック

新生K-1はネットメディアを中心にプロモーションを行っています。
全ての大会でAbemaTVで生中継を行っているほか、大会後1ヶ月ほどすると全試合がYouTubeに動画投稿されています。

AbemaTVではスマホ世代の若い男女に人気で、常に人気ランキングのトップに位置するなど、水面下で人気を獲得しているのがよく分かります。

YouTubeでは公式チャンネルを解説しており、生中継の映像をそのまま楽しむことができます。
好きな選手を追いかけるも良し、一つの大会を順番に見ても良し、好きなように楽しみにください。

まだ新生K-1は生まれてから2年しか経っていません。
身の丈にあった戦略で着実に人気を伸ばしているので、この記事を読んで興味を持って頂けたらぜひチェックしてみて下さい。

新生K-1注目の選手ランキング
新生K-1注目の選手ランキング
K-1は1993年に日本で誕生し、世界最大級の格闘技イベントとして世界中で人気を博した立ち技格闘技イベントです。2011年に運営団体の資金難からK-1の興行は中止となり、その後紆余曲折を経て、現在は「新生K-1」として新たな運営団体がK-1の興行を行っています。これまでのようなテレビ向けのエンターテインメント色の強い興行形態ではなく、ジュニア世代の育成を含めて長いスパンでK-1をスポーツとして広めることを目的としています。全く新しい選手たちによる新生K-1は、YouTubeやSNSなどでティーネージャーを中心に人気を獲得しており、これまでリーチしてこなかった女性ファンの獲得にも成功しているなど、徐々にメジャー化への道を歩んでいます。この記事では、新しいK-1の選手を知り、興味を持っていただくための入り口として、おすすめの選手をランキング形式で紹介しています。この記事を通じてK-1に少しでも関心を持っていただければ幸いです。また格闘技の記事としては、他にもRIZINのおすすめ選手ランキングも掲載しておりますので、こちらも興味があれば読んでみてください。

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